メタバースを始めようと思うと、「VRが必要なのでは?」や「MetaMaskを使って暗号資産を購入しなければいけないのでは?」といったイメージを持つ方も多いかもしれません。しかし、実際にはメタバースの種類によって、始め方は異なります。本記事では、メタバースをいくつかのタイプに分類し、それぞれの特徴と始め方について解説していきます。
メタバースのタイプ分類
メタバースは様々なタイプがあり、それぞれに異なる目的や体験があります。ここでは、私が感じている主なメタバースのタイプを紹介します。
1. ソーシャルVR系メタバース
ソーシャルVR系メタバースは、VRChatやResoniteなどが代表的なプラットフォームで、VRを基盤とした没入型の体験を提供します。これらのメタバースでは、人々と仮想空間内で交流し、現実とは異なる自分を表現することができます。見た目や性別、職業など、リアルの自分にとらわれることなく、本当になりたい自分として活動できることが特徴です。新しい人間関係や、新しい時間の過ごし方を求める方にとって、非常に魅力的な場所です。
2. スマホ系ソーシャルメタバース
スマホで気軽に始められるメタバースも存在します。ZepetoやBondeeなどは、従来の2DのSNSが3D化されたような体験を提供し、友達と一緒にアバターで遊んだり、写真を撮ったりすることができます。自分好みのアバターを作り、友達とバーチャルなお出かけをすることで、2DのSNSでは得られない「一緒にいる」感覚が味わえるのが特徴です。
3. クリエーターエコノミー系メタバース
クリエーターエコノミー系メタバースは、創る人(クリエーター)と消費する人が同一であることが多く、いわゆる「プロシューマー(プロデューサーとコンシューマーを合わせた言葉)」が経済圏を形成しているのが特徴です。このタイプのメタバースでは、ユーザーがデジタルアイテムやコンテンツを制作し、それを他のユーザーに販売することで収益を得ることができます。その代表的な例がSecond Lifeです。
Second Lifeは、ブロックチェーンを利用していませんが、クリエーターによって制作されたアイテムやアバターにはそれぞれ固有のクリエーター情報が付与されており、誰が作成したかが明確に示されます。このように、アイテムの所有権がはっきりしているため、ユーザー同士での取引が活発に行われ、独自の経済圏が形成されています。
クリエーターエコノミーの大きな特徴として、「蓄積による資産価値」が挙げられます。デジタルアセットは物理的に劣化することがないため、クリエイターが作成したアイテムや衣装は長期間にわたり価値を持ち続けます。例えば、趣味でアイテムを制作していたクリエイターが、10年、20年という長いスパンで少しずつアイテムを販売し続けることで、結果的に不労所得に近い収益を得ることも可能です。
これは、従来のアナログ商品には見られない「ロングテールモデル」に似ており、デジタルならではの新しい経済モデルといえるでしょう。クリエイティブな活動が好きな人にとっては、自分の作品が長期間にわたって収益を生み出す可能性があり、その自由度の高さが魅力となっています。
また、クリエーターエコノミー系メタバースでは、制作したアイテムを簡単に販売できるプラットフォームが整っていることが多く、誰でも気軽にクリエイターとしての活動を始めることができます。これにより、プロフェッショナルだけでなく、アマチュアクリエイターでも大きな成功を収めるチャンスが広がっています。
4. ゲーム系メタバース
ゲーム系メタバースは、バーチャルな空間を提供し、その中でユーザー同士が交流し、さまざまなゲームや体験を楽しむことができるプラットフォームです。代表的な例としては、FortniteやRoblox、Spatialが挙げられます。
これらのメタバースでは、単にゲームをプレイするだけでなく、ユーザーが自分自身でゲームや体験を作成し、他のユーザーと共有することが可能です。特にRobloxは、ユーザーが自作のゲームを公開し、他のユーザーに遊んでもらうというクリエーターエコノミーの要素を取り入れており、ゲーム開発の門戸が非常に広く開かれています。ユーザーがゲームを作成して友達とさまざまな体験を共有できるという点では、これもまた一つのゲーム版クリエーターエコノミーと言えるでしょう。
さらに、ゲーム系メタバースでは、従来の「ゲーム」とは少し異なる体験ができるのも特徴です。例えば、現実世界では公園で鬼ごっこをしたり、友達と遊んだりしていたような体験を、バーチャル空間で再現することができます。また、ただ遊ぶだけでなく、学びや教育の要素を取り入れたゲームも存在しており、遊びながら学べるという新しい教育手法が注目されています。これは、いわば体験のゲーミフィケーションであり、あらゆる分野でゲーム的な要素が活用される現代のトレンドにマッチしています。
ちなみに、ゲーム系メタバースのビジョンは、アラン・ケイが1970年代に描いた未来像にも通じます。アラン・ケイは、将来のコンピュータの使い方として、子どもたちがタブレットのような端末を使って、宇宙ゲームを作りながら物理学を学んでいる姿を想像しました。彼が思い描いたように、今ではゲーム系メタバースを通じて、ユーザーが楽しみながら知識を身に付けたり、創造力を発揮したりする時代が到来しているのです。
また、Fortniteのようなゲームでは、単なる戦闘ゲームにとどまらず、バーチャルライブやイベントが開催されるなど、リアルとバーチャルが融合した体験を提供しています。これにより、ゲームという枠を超えて、バーチャルな「場」としての役割を果たしており、メタバースとしての広がりを見せています。
ゲーム系メタバースは、従来のゲームとは異なり、ただプレイするだけでなく、ユーザーがクリエイターとして関わり、他のユーザーと一緒に楽しみを共有する場となっているのが特徴です。このように、単なる「ゲーム」から「体験のプラットフォーム」へと進化しているのが、現代のゲーム系メタバースと言えるでしょう。
5. Web3型メタバース
SandboxやDecentralandなど、ブロックチェーン技術を利用したWeb3型メタバースも存在します。これらのメタバースでは、土地や建物がNFTとして所有され、デジタル資産の価値が証明されます。これにより、デジタル上でも資産としての価値を持つ経済圏が形成されています。Web3型メタバースは、ある程度の暗号資産の知識やウォレットの設定が必要ですが、参加のハードルが下がってきています。
6. 産業向けメタバース
産業向けメタバースは、デジタルツインやシミュレーションなど、リアルな世界と連動した仮想空間を利用して産業にフィードバックを行うものです。Omuniverseなどが代表的で、消費者向けのメタバースとは異なり、産業における効率化やシミュレーションが目的とされています。これからも確実に発展していく分野です。
7. リアルとの融合系メタバース(空間コンピューティング)
Apple Vision Proなどのデバイスが登場したことで、デジタルとリアルのデータを融合させるMR(複合現実)の進化も期待されています。STYLYのようなリアルベースのメタバースも、今後さらに注目を集めるでしょう。
メタバースの始め方はタイプ別に異なる
このように、メタバースには多様なタイプが存在し、それぞれに応じた始め方があります。例えば、ソーシャル系メタバースであれば、まずは友達を見つけることが大切です。各プラットフォームには「初心者の館」のような場所が用意されていることが多いので、そこを訪れて質問すると、親切に教えてくれることがほとんどです。また、X(旧Twitter)などで情報発信を行っている人に質問してみるのも良いでしょう。
クリエーターとして活動したい人は、まずはコミュニティを探すのが良いでしょう。多くのプラットフォームではDiscordなどでコミュニティが形成されており、そこに参加して実際のイベントに参加することで仲間を見つけることができます。特にclusterなどのコミュニティイベントに参加するのはおすすめです。
メタバースは「仲間との体験」が基盤となっているため、最初は「仲間探し」か「イベントに参加して体験してみる」ことから始めるのが良いでしょう。
まとめ
メタバースを始めるには、まず自分がどのタイプのメタバースに興味があるかを見極めることが大切です。それに応じて、ソーシャルな交流を楽しんだり、クリエイティブな活動をしたり、あるいはブロックチェーン技術に基づいた経済圏に参加することができます。どのメタバースも「体験」が中心にあり、仲間やコミュニティとのつながりがその魅力を引き出します。ぜひ、気になるメタバースに足を踏み入れ、新しい世界を楽しんでみてください!
また、17Campusでは様々なメタバース体験を提供していますので、興味があればぜひご参加ください!